映画日誌’23-05:エンドロールのつづき
trailer:
introduction:
インド・グジャラート州出身のパン・ナリン監督の実話をもとに描いたヒューマンドラマ。インドの田舎町でチャイ売りをしている少年が映画と出会い、映画監督になる夢を抱く。約3000人の中から選ばれた新人バビン・ラバリが主演を務める。本年度アカデミー賞国際長編映画賞インド代表に選出され、第66回バリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞した。(2021年 インド/フランス)
story:
インドの小さな町に暮らす9歳のサマイは、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。バラモン階級であることにこだわる厳格な父は映画を低俗なものと考えているが、信仰するカーリー女神の映画だけは特別だと家族で映画館に行くことに。初めて映画館を訪れたサマイはすっかり映画に魅了されてしまい、再び映画館に忍び込むがチケット代を払えず追い出されてしまう。それを見ていた映写技師ファザルが、料理上手なサマイの母が作る弁当と引き換えに映写室から映画を見せると提案し...
review:
インドのグジャラート州出身者として初の米アカデミー会員に選ばれ、世界中の映画祭で輝かしい功績を持つパン・ナリンの自伝的作品である。チャイ売りの貧しい少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる、というストーリーだ。監督自身の故郷であるグジャラート州でのロケを敢行し、子役たちも全員グジャラート州出身であることにこだわった。グジャラート語の舞台や映画に出演している俳優たちが脇を固める。
主人公サマイに大抜擢されたバビン・ラバリはグジャラート州・ヴァサイ村に住むラバリ族出身の9歳(撮影当時)。村の学校に通いながら、祖父のお茶売りを手伝っており、本作の撮影前まで実際に映画館で映画を見たことが無かったそうだ。同じクラスのリヤという女の子に恋をしているが、まだ一度も会話を交わしたことはないとのこと。登場する子どもたちが可愛らしく、微笑ましい気持ちになるが・・・
インド版ニュー・シネマ・パラダイス、ではない。先人たちへのリスペクトとオマージュが詰まっており映画愛に溢れていると評する人もいるが、思いついたこと全部盛り感あるし、何にしろ一介の映画ファンとしては子どもたちの行動が許容できない。たしかにサマイが映画と出会い魅了され、好奇心を募らせ探究心を突き詰めていく流れは分からんでもないが、フィルムへの冒涜行為が許せな〜い〜!!と思う映画ファンは私だけではないのではなかろううか。
退屈するわけではないし最後は何だかきれいにまとまって、あ、なんか良い映画だったのかもという気になるが(そこはすごいと思う)、文化や価値観の違いもあろうが主人公の行動にまったく共感できない。映画の仕組みに興味津々なのはともかく、彼から映画愛を感じないのでここから映画監督になったと言われても映画を生業にしたい動機や衝動が見えない。母親の手料理シーンなど見どころはいくつかあるので決してつまらない映画ではないが、とにかく子どもとは言え素行が悪すぎる。その印象が払拭できず、やや苦々しい映画体験となった。
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