映画日誌’21-49:ディア・エヴァン・ハンセン
trailer:
introduction:
トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いたブロードウェイミュージカルを映画化。監督は『ワンダー 君は太陽』などのスティーヴン・チョボスキー、『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』の名コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが楽曲を手がける。主演は舞台版に続きベン・プラットが務め、『メッセージ』などのエイミー・アダムス、オスカー女優ジュリアン・ムーア、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』などのケイトリン・デヴァーらが共演する。(2021年 アメリカ)
story:
学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいる高校生のエヴァン・ハンセン。ある日、自分宛てに書いた“Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)”から始まる手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーは自ら命を絶ち、その手紙を見つけた彼の両親はエヴァンを息子の親友だったと勘違いすることに。悲しみに暮れる遺族を苦しめたくない一心で話を合わせて嘘をつき、ありもしないコナーとの思い出を語るエヴァンだったが、そのエピソードが人々を感動させSNSを通じて世界中に広がっていき...
review:
ミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」はブロードウェイで初めてSNSを題材に扱い、初上演後たちまち全米で社会現象となりチケットは連日完売する大人気作品となったそうだ。 映画化にあたり、ブロードウェイ版の初代エヴァン役で繊細な演技と抜群の歌唱力が大絶賛されたベン・プラットが起用されている。
が、主人公のエヴァンが高校生には見えないおっさん顔で困惑。撮影当時28歳だったらしいけど、冴えないヘアスタイルも相俟って無理がある。フレッシュ感のないおっさん高校生、基本ひとりぼっちなのでモブが出てこず、ひらすら朗々と独唱。しかも歌の尺は長いのに、それ以外が駆け足で描き方が雑。エヴァンやコナーの心が追い詰められてしまった背景すら語られないので感情移入できない。
ミュージカルは思いや心情を歌にのせて表現するものだが、『レ・ミゼラブル』の「夢やぶれて」や『グレイテスト・ショーマン』の「This Is Me」みたいに胸に迫り来るようなものはなく、なぜか心に響かない。ミュージカルであることが全く効果的でないのである。この映画のハイライトでもある、人々の共感を呼ぶシーンにも全く共感できない。だって嘘だし。
そう、元も子もないことを言ってしまうと、そもそも、設定とストーリー構成がよろしくない。とっさについた”嘘”が大きな出来事に発展してしまうのだけど、”自死”というシリアスで重いテーマを絡めてしまったことでモヤモヤしてしまう。息子を失った遺族に対してスラスラと嘘をつく主人公にドン引きするし、これ幸いと妹に近付くのも冷静に考えたら気持ち悪すぎる。
死んだから、バズったから手のひらを返したようにすり寄ってくる人々、薄っぺらい友情ごっこを延々と見せられる。コナーにもエヴァンにも誰ひとり心から寄り添ってないのに、「あなたはひとりじゃない」って言われても何の説得力もない。面白い面白くないという次元ではなく、これは好きじゃなかったなぁ。ジュリアン・ムーアの存在感と、”家族の友達”であるジャレットのコミカルな演技に笑わされたのが救い。
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