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映画日誌’24-23:バジュランギおじさんと、小さな迷子

trailer:

introduction:

インド映画として、『ダンガル きっと、つよくなる』『バーフバリ 王の凱旋』に次ぐ世界興行成績歴代3位を記録した2015年のヒット作がリバイバル公開。底抜けに正直でお人好しなインド人青年と、声を出せないパキスタンからの迷子の少女の二人旅を描く。主演はインド映画界で最も影響力のある<3大カーン>のひとり、サルマン・カーン。5,000人のオーディションから選ばれ、本作で人気子役となったハルシャーリー・マルホートラ、『きっと、うまくいく』などのカリーナ・カプール、『LION/ライオン 25年目のただいま』などのナワーズッディーン・シッディーキーが共演する。監督は『タイガー 伝説のスパイ』でもサルマンとコンビを組んだカビール・カーン。(2015年 インド)

story:

パキスタンの小さな村に住む女の子シャヒーダー。幼い頃から声が出せない彼女を心配した母親と一緒に、インドのイスラム寺院に願掛けに行くが、帰り道で一人インドに取り残されてしまう。そんなシャヒーダーが出会ったのは、ヒンドゥー教のハヌマーン神の熱烈な信者、パワンだった。正直者でお人好しなパワンは、これもハヌマーンの思し召しと、母親とはぐれたシャヒーダーを預かることに。しかしある日、彼女がパキスタンのイスラム教徒と分かって驚愕する。歴史、宗教、経済など様々な面で激しく対立するインドとパキスタン。それでもパワンは、パスポートもビザもなしに、国境を越えてシャヒーダーを家に送り届けることを決意するが…

review:

今月上旬、観たい映画が全く見当たらず途方に暮れていたところに、数年前に世界的ヒットしたボリウッド映画のリバイバル上映を発見。主演俳優が「3大カーン」のひとりと言われてもピンとこない程度のにわかではあるが、たまにはインド成分を摂取しておくか、と仕事帰りに新宿三丁目の劇場に吸い込まれてきた。ところで昨今の新宿はインバウンドの観光客だらけで、もはや日本じゃないみたい。多国籍な人混みをかき分けて劇場にたどり着き、ボリウッド映画のオープニングクレジットを眺めていると、自分のほうが異国に流れ着いた異邦人みたいな気持ちになるが、字幕が日本語なのでここは日本らしい。

さて物語は、バカ正直で信心深いインド人青年が、母親とはぐれたパキスタンの少女と出会い、国や宗教を超えて少女を両親の元に送り届けようと奮闘するものだ。もともと1つの国だったインドとパキスタンは、第二次世界大戦後に英国から独立する際に分離。ヒンドゥー教徒が多いインドと、イスラム教徒が多いパキスタンはカシミール地方の帰属を巡って対立を深め、未だに解決していない。ヒンドゥー教の熱烈な信者が、イスラム教徒の少女を命懸けで助けようと奔走する愛のドラマには、そんな背景がある。その感動的なラストシーンは、国と宗教の対立を終わらせる可能性を秘めており、実に見応えがあるものだ。

ボリウッドなので当然長い。中盤で一瞬集中力が途切れたのはご愛嬌。『バーフバリ』や『きっと、うまくいく』みたいな名作と比べるとやや見劣りするものの、ユーモアとスリルが程よく織り込まれ、ボリウッドらしい様式美と歌い踊る人々を微笑ましく眺めてきた。インドとパキスタンの人気アーティストが集結し、ふたつの文化が融合した音楽も素晴らしい。大都市のデリー、パキスタン国境付近のパンジャーブ、ラジャスタンのタール砂漠カシミールの山岳地帯など、インドの壮大な大自然や人々の暮らしが映し出され、二人と一緒に旅している気分になれるのも魅力的だ。長かったけどいい映画だった。長かったけど。

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