映画日誌’23-39:アステロイド・シティ
trailer:
introduction:
『グランド・ブダペスト・ホテル』などのウェス・アンダーソン監督が、砂漠の街で宇宙人と遭遇する人々の大騒動を描いたコメディドラマ。ウェス作品の常連ジェイソン・シュワルツマンが主演を務め、同じく常連のエドワード・ノートンのほか、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マーゴット・ロビー、ウィレム・デフォー、マット・ディロン、ティルダ・スウィントン、エイドリアン・ブロディ、スティーヴ・カレル、マヤ・ホークなど豪華なキャストが集結。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。(2023年 アメリカ)
story:
時は1955年、アメリカ南西部に位置する砂漠の街、アステロイド・シティ。隕石が落下してできた巨大なクレーターが最大の観光名所であるこの街に、ジュニア宇宙科科学賞の栄誉に輝いた5人の天才的な子どもたちとその家族が招待される。子どもたちに母親が亡くなったことを言い出せない父親、映画スターのシングルマザーなど、それぞれが複雑な思いを抱えつつ授賞式が始まるが、祭典の最中に突如として宇宙人が現れ人々は大混乱に陥ってしまう。
review:
みんなお待たせ、ウェス・アンダーソンの新作だよ!人口わずか87人の砂漠の街アステロイド・シティに宇宙人がやってきて街は封鎖されるし、軍は宇宙人出現の事実を隠蔽しようとするし、子どもたちは外部へ情報を伝えようと企て、てんやわんやの大騒ぎだよ!2023年カンヌ国際映画祭のプレミア上映されると6分間のスタンディング・オベーションで讃えられ、アメリカでの先行公開では3日間で1劇場あたり13.2万ドルと『ラ・ラ・ランド』以来の最高記録を樹立したそうだ。
ところが蓋を開けてみると、賛否両論。ウェス・アンダーソンのファンによる手厳しいレビューが並んでいる。ウェス・アンダーソンらしい世界観が完成されているのはいいとして、とにかくプロットがよろしくないとのこと。みんな欲しがりさんだなぁ。かく言う私も実を言うと前作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』がイマイチ刺さらなかったので不安を抱えながら観たが、もしかしたらウェス・アンダーソン作品で一番好きだったかもしれない。
ウェス・アンダーソンらしいポップなパステルカラーで彩られ、自然物と人工物が整然と立ち並ぶシンメトリーな世界。ウェス・アンダーソンらしいシュールでダークなユーモアが散りばめられており、どこを切り取ってもウェス・アンダーソンの金太郎飴。ホントにナンセンスでくだらないんだけど最高。何ならカメラ目線の宇宙人だけで白米がおかわりできるほど心が満たされたし、この世界を理解できる大人でよかった。とは言えおいちゃんは『マーズ・アタック』が好物という人間なので信用しないように。
ストーリーが入れ子構造になっているため少々ややこしく、集中力を切らすと意味がわからなくなるかもしれない。が、ちゃんと理解できなくても大丈夫。頭を空っぽにしてウェス・アンダーソンの世界に身を委ねていればいいのだ。目覚めるためには眠らなければならない。現実を生きるために虚構がある。虚構と現実が内混ぜになった虚構の世界を眺めながら、人はなぜ創作せずにはいられないのか考え込んだりする。それはきっとウェス・アンダーソンの思う壺で、ある意味、最高傑作じゃない?
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