『恋の遺影』早乙女ぐりこ

6月、機械書房さんで早乙女ぐりこさんの『恋の遺影』を購入しました。金沢駅に帰る新幹線で読んで、私はこの日記の虜になりました。
今まで感想をどこかに書こうと思い続けていたのですが、その人のむき出しの言葉を感想にするのは良くないのではないかと悩んで書けませんでした。しかし、私はこの日記に出会って日記の素晴らしさを知りました。

武塙麻衣子さんの『驟雨とビール』僕のマリさんの『清潔な寝床』蟹の親子さんの『にき』を読みました。どれも夢中になって読みました。浅沼シオリさん、早乙女ぐりこさん、武塙麻衣子さんの日記のアンソロジー『三酒三様』を読んだ時は、日記のアンソロジーをもっと読みたいと震えました。

今回は、日記本にハマるようになり、過去に書いた日記を本にするきっかけになった『恋の遺影』について書きます。

『恋の遺影』は2023年1月3日から3月21日までの日記です。なぜ、この期間なのだろうか。それはタイトルに関連していました。
恋の始まりから終わりまでの日記なのです!
「遺影」の言葉から悲しい恋愛を想像するかもしれませんが、それは違いました。ページを開くと、早乙女さんのサインがあり、
〈恋のYEAH!!早乙女ぐりこ〉と書かれています。
恋の始まりのわくわく、途中のはらはら、手を振る時の切なさ。それが、文章から伝わってきます。早乙女さんのむき出しの言葉を聞いていると、「このこの〜羨ましいぜ〜」という気持ちになったり、日常が少しずつ変わっていく様子を見ていると「その作品読みたい!そのご飯食べたい!」と思いながらも、恋人(ここではそう書くことにする)が出てこないのは生活から離れているのかな、と不安になります。
しかし、早乙女さんは書くことと書かないこと、についても考えながら、日記を書いていました。
日記を公開することは、周りの人にある程度配慮した書き方をしなくてはなりません。

早乙女さんの日記を読み終わった時、物語を超えたなにかが心をちりちりと燃やしていました。興奮して、その日はよく眠れず、次の日はお腹を壊すくらいに、早乙女ぐりこさんの『恋の遺影』の虜になっていたのです。

日記はその人のすべての書いたものではない、と思っています。しかし、その人のカケラは文字としてあるのではないかと思うのです。
早乙女さんの文字は筆圧が強く、ぼぉっと火がつきそうです。本が燃えてなくなってしまうのではないか。そう思わせるパワーがありました。

日記は書き手と文章の距離が近い人とあえて距離を置いて書いている人に分かれていると思います。どちらの場合でも、生身の声が聞こえてきます。自分と書き手が交わり合うような不思議な気持ちになります。
小説を読む時と別の脳が動いていました。私小説ともエッセイとも違う読書体験でした。

新しい読書体験をしたい方に日記本はおすすめです。読書好きさんや映画好きさんが多いので、読みたい本が増えます。
武塙麻衣子さんの日記はお酒好きの方におすすめです。友達に「ここいいよ!」っておすすめされた気分になります笑
日記を読んでいると「わかる!」とか「美味しそう」とか心の中で相槌を打ってしまいます。
早乙女ぐりこさんの『恋の遺影』を読んでいた時、私は会話をしていた気がします。恐ろしい。笑



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