夢をもう一度見ないか 8
着いたのは小粋な喫茶店だった。古き良きを体現しているレトロな外観。
いろは:めちゃくちゃ雰囲気いいな…。
茉央:やろ!うちの親戚すごいんよ!
いろは:もしかしてこれ設計って…
茉央:うん!親戚がやった!
茉央の一族は才能に溢れすぎているのではないか?
茉央:早速行くで〜
いろは:あっ、ちょっ!待ってよ!
私のことをお構い無しに扉を開けて進む茉央
茉央:よーこ!きたで!
陽子:はいはーい!おかえり!茉央ちゃん!
茉央:ただいま〜!おばさんも!ただいま!
??:まだおばさんちゃうわ!おかえり!
ここって都内なんだよね?空間違いすぎないかな…?
いろは:あ、あの〜
陽子:あ!あなたがいろはさん?はじめまして!正源司陽子です!
いろは:初めまして、奥田いろはです。
茉央:な!かわええやろ!
陽子:いやー、これはうちに勝るとも劣らんって感じやな…。
茉央:何言うとんねん
??:こら、陽子困らせとるやんな。ごめんな?
いろは:い、いえいえ…。
七瀬:あ、うちは七瀬や。陽子の叔母ってとこやな。
いろは:七瀬さん…よろしくお願いします。
七瀬:ふふっ、緊張せんでええんよ。さ、お腹すいたやろ?なんか作ったるわ!
陽子:うちのおばさん料理めっちゃ上手いんや!
茉央:おばさんのパワーが詰まってる感じやな!
七瀬:さっきからおばさんおばさんうるさいわ!まだおばさん程老けとらんわ!
いろは:あ、あはは…。
関西人のペースに飲まれつつ七瀬さんが料理を作ってくれる。その間に茉央と陽子ちゃんとお話をしていた。
陽子:へぇ!茉央ちゃんが憧れてたシンガーなんや!
茉央:せやで!やめようとしてたから引き止めたらバンド組んでた!
いろは:今でも本当に驚きだよ。茉央いなかったら…。
茉央:いなかったら…?
いろは:ううん、あんま言わない方が良いかも。
少し重苦しい雰囲気を出してしまった…
陽子:じゃあ茉央ちゃんヒーローやんな。
茉央:え!ホンマに!?
ここでもノリいいのか、凄いな。
茉央:まぁーな、うちは凄いからな!
陽子:ふーむ、にしても…。
訝しむように見られている。なんだろうか…
よそ者は…的な…
陽子:めっちゃ可愛いわ。うちに連れて帰りたい。
茉央:あかんやろ。
いろは:あ、あはは…ありがたく受け取っとくね。
陽子:当たり前やで!本心本心!
茉央:ぞっこんやなぁ。まぁウチもやけどな。
いろは:え、茉央も思ってたの?
陽子:意外とちゃんと言わないタイプやもんなぁ?
茉央:へへっ、ミステリアスってやつやろ?
いろは:嬉しいなぁ。
七瀬:だいぶ打ち解けてるな?ほなご飯や!
いつの間にか用意が終わっていたらしい。
七瀬:なぁちゃん特製ソースカツ丼や!
いろは:…すごい美味しそう…!
陽子:最近ソース派になったん?
七瀬:せや!ソースの二度漬けは厳禁やで!
茉央:まだ言うとるわ。
なんでもとあるアイドルの名言にハマったらしい。
いろは:いただきます!
湯気が立ち上る出来たてを口に運ぶ
いろは:…美味しい!すごい美味しいです!
七瀬:やろ!?
陽子:料理だけは1級品よな
七瀬:なんや余計な一言。
茉央:なんで彼氏できひんのや。
七瀬:…泣くぞ?
いろは:え、彼氏いらっしゃらないんですか!?お綺麗なのでいらっしゃるかと…。
七瀬:…何気に今のが1番心にくるかもしらんな。
ーーー
程なくして食べ終え、ここからは面接に
七瀬:さて、私の心に傷を残した奥田いろはさんやな。
やらかしたかもしれない。
いろは:この度は本当に…申し訳ございませんでした…。
陽子:別にええよ、気にしても無駄や。
七瀬:さっきから当たり強ない?
面接でもこんな感じなのか…
七瀬:…ふむ、ミュージシャン目指して上京、前のバイトはクビ…。4年勤めてるなら多分会社の都合やな。
いろは:はい。年齢的にも信頼出来る実績なども今のところは何も…。
七瀬:うん、採用やな。
陽子:せやね。
いろは:…え、いいんですか?
七瀬:話してる限り真面目そうやし、なんせ可愛いからな。
陽子:うちの次にやけどな!
いろは:…あは。ありがとうございます…!
七瀬:ん。なんや、こっから割と遠いとこに住んどるな。うち住むか?
いろは:…えっ?
陽子:いろはちゃん来たら嬉しいわ!なぁ!茉央ちゃん!
茉央:うちも嬉しいでー!
いつの間にか茉央も後ろにいた。
七瀬:な、部屋も1個空きあるから、どう?
いろは:…よろしくお願いします!
七瀬:決まりやな!ほなら研修からビシバシ行くで!
いろは:ありがとうございます!
トントン拍子で話が進んでしまったがとりあえず働き口と新しい住処を見つけることが出来た。ここからまた再スタートしよう、希望が見えた。