ワクチン未接種者への外出自粛要請は必要なのか???
『新型コロナ 2回目までの未接種者に不要不急の外出自粛要請へ』というニュースについて。
※記事が消えているので、こちらを参照してください
新型コロナ(オミクロン)感染者の増加に伴い、山梨県で、2回目までのワクチン接種を終えていない人への不要不急の外出自粛が要請されたとのこと。
山梨県の新型コロナ総合対策本部会議で決定し、知事が会見で発表したそうだ。
その趣旨は当然「ワクチンを2回打っていない人は、感染を広げやすいので周りに迷惑をかけないようにじっとしててくださいね」ということである。
そこで、ちょうど前回のnote記事『手を洗う救急医さんの情報の捉え方が恣意的な件について』で貼り付けたワクチンの感染防止効果に関するデータに更新があったので、その追記とあわせ、
「ワクチンを2回打っていない人は、感染を本当に広げやすいのか?」
について考えてみたい。
前回の記事で使わせていただいたデータは、デンマークの論文からのこれである。
元論文はこちら
要するに、2回接種から、約2ヶ月経つとオミクロンへの感染防止効果はゼロに近くなり、3ヶ月以後ともなれば未接種者より5割増しから最大10割増しで感染し易くなってしまうという結果だ(詳しくは前回の記事を読んでね)。
なぜこれで未接種者の方の行動を規制しようとするのか、謎である。対象が逆ではないか?
そして、同じような調査の結果が先日カナダとイギリスでも出たようなので、それをここに記載したい。
カナダは、このような結果になっていた。
引用元こちら
左半分が2回接種後のデータ、右半分は3回目のデータ。
3回目の話はいったん置いておいて、あくまで山梨県での要請は「2回目までのワクチン接種を終えていない人への不要不急の外出自粛」なので、とりあえず左半分だけ見てみる。
デンマークと似たような結果で、2ヶ月経つともう2回接種者の方が未接種者よりもオミクロンに感染しやすくなってしまっている。
続いて、イギリス。
引用元こちら
これも左半分が2回接種後で、右側はブースター(3回目)後の結果。
イギリスは、2回接種から一定期間経過しても、けっこう粘っている。
半年経っても10%くらい、オミクロンに対して感染防止効果があるようだ。
※これらはその国の接種者全員を調べたわけではなく、一定のサンプル数での結果であろうが多分統計的に全体にも適用できるのではないか
なお私が見つけられたデータは今のところデンマークとカナダとイギリスだけである。グラフのない文章と数字だけの難しいレポートなどは他の国でもおそらくあるのだろうが、私のリサーチ力で見つけることは不可能であった。
ということで、イギリスでは10%の効果は残しているが、3カ国を並べるとこんな感じで……
この3カ国の結果をだいたい平均すれば、実際のだいたい平均のワクチンの感染防止効果(接種から数ヶ月経過後のオミクロンに対しての)と想定できるとして、残念ながら平均したら効果はマイナスである。
効果がある人もいればマイナスの人もいて、しかし全員合わせて平均すると割とはっきりマイナスの効果だと考えられると思う。
ちなみに前回の記事で取り上げさせていただいた救急医Tさんは、イギリスのデータをTwitterで引用して「ワクチンの感染防止効果が証明されました」と誇らしげに仰っていた。
デンマークの論文に対しては「人々の行動を考慮していないからこんなデータは信用ならん」というような言い方で難癖つけていたけれど、結果がプラスになっているイギリスのデータに対しては「人々の行動が……」みたいなことは一切言わず、「ほら見ろ効果があるぞ」と断言されていた。予想した通りである。
さて、日本でワクチンを2回接種した人はもうとっくに接種後3ヶ月は経っているだろうから、そう考えると日本の2回接種者はどちらかというと未接種者に比べて、オミクロン主流の第6波(つまり今)では感染を広げやすいグループだということになる。
その現実がある中で、なぜ安全な未接種者の方を自粛させようとしているのか??
いくらか譲歩したとしても、3カ国のデータから考えれば、2回接種者の感染防止効果はマイナスでないとしてもプラスではないだろう。
譲歩してゼロとしておこう。平均してゼロより上に行くことは、少なくとも上の結果から考えるとないと思われる。ゼロとみなす。
いくらか譲歩しても感染防止効果がゼロだとすれば、山梨県のように「2回目までの未接種者に不要不急の外出自粛要請」を行うことは、まったくなんの意味もない行為ということになる。
意味がないを超えて、むしろただの人権侵害であり不当な行動制限であり社会の分断であり害悪な行為だ。
それは山梨だけでなく国がやるのやらないのと言っているワクチンパスポートや、その他の「ワクチン未接種者お断り」のイベントやお店や施設などについても同様のことが言える。
そもそも、外出を自粛したり人流を抑制することで感染などまったく抑えられないということは、この2年で我々は学んだはずではないか。
一度増え始めれば、全国民を緊急事態で閉じ込めても対策などあざ笑うかのごとく増えて行き、一度下火になれば、みんなが外で飲み歩くようになっても勝手に減って行く。なにをしようがしまいが、人々の行動に関わらず波が来ればぐんぐん増えるしピークに達すればぐんぐん減る。増加も減少も同じグラフの角度で。宣言を出そうが解除しようが角度は露ほども影響を受けずに。宣言もまん防もなかった第2波でもまったく同じように。
そんな過去2年の経験を踏まえて、「一部の人間だけに自粛を要請」でなにかが変わるとまだ思っているのか……。
なお、「重症予防効果はあるではないか」という意見もあると思う。
感染防止はできなくても、ワクチンを打っていれば重症化をいくらか防げるのではないかと。重症化する確率が未接種者の方が高いのなら、医療の負担を考えれば未接種者の自由に制限をかけるのは妥当だと、言っている人も見かける。
それに対しては、
そんな理屈が通るのなら、では生活習慣病のリスクや怪我のリスクが高い人たちも行動制限させた方が良いのですか?と、私は問いたい。
太った人はコロナおよび各種生活習慣病で医療のリソースを奪う確率が高いから痩せるまで行動制限。タバコを吸う人は肺を病んで医療のリソースを奪う確率が高いから禁煙するまで行動制限。お酒が好きな人は肝臓を悪くして医療のリソースを奪う確率が高いから断酒するまで行動制限。運転手や運送業の人は事故を起こして他人まで巻き込んで医療のリソースを奪う確率が高いから退職するまで行動制限(というか労働制限)。スポーツ選手や格闘家や大道芸人や登山家やF1レーサーも怪我をして医療のリソースを奪う確率が高いから引退するまで行動制限。老人なんてコロナを含めあらゆる感染症で重症化しやすく医療のリソースを奪う確率が高いから亡くなるまで行動制限。生まれつき体が弱い人も医療のリソースを奪う確率が高いから一生行動制限。子供は走り回って転んだり事故に遭ったりして医療のリソースを奪う確率が高いから大人になるまで行動制限。当然インフルエンザや肺炎球菌A型肝炎B型肝炎破傷風コレラポリオおたふく百日咳……などのワクチンを打っていない人は医療のリソースを奪う確率が高いから行動制限。
そんな非道な差別が許されると思う人のみ、「未接種者は医療のリソースを奪う確率が高いから行動制限しろ」と言えばいい。
そもそも新型コロナは全体の1割ほどの病院でしか治療してもらえず、にもかかわらず軽症でも(一部は無症状でも)入院させてしまう上に濃厚接触者になっただけで医療従事者は10日も仕事を休まなければいけないという、無茶苦茶の5乗くらいの意味不明なシステムになっている、そこに文句を言うのが先ではないか?
………以上、山梨県の未接種者外出自粛要請にはまったく意味がない、という私の意見でした。
P.S. 3回目の接種について。
上に貼り付けたカナダとイギリスのデータでは、ブースター接種後の感染防止効果も記載されている。
これを見ると、カナダ(上)は微妙なところだが、イギリス(下)ではかなり高い感染防止効果が現れている。
ただ、3回目接種直後のデータである。接種から何ヶ月も経った後にどうなるかは、まだわかっていない。
なにしろ接種して1ヶ月2ヶ月の間であれば、2回接種の時だって感染防止効果はあったのだ。
2回接種の場合、接種後何ヶ月か経ったところで新しい株(正式には株はおかしくて「変異体」「バリアント」だそう)が登場し、その新株に対しては効果がないどころか下手をしたら逆に感染し易くなってしまっている。
では、3回目はこの後どうなるか……? 2回目と同じ末路を辿るかもしれないし、今度はそうはならないかもしれない。
ただし、もう世間的には『3回目接種、想定の16%どまり…高齢者の意思確認難航・医療従事者は副反応懸念』である。
日本人全体の16%ではなく、今月までに打って欲しいと国が想定していた人のうち、16%しか打っていないのである。人数にすると打った人が236万人だそうなので、日本人全体で考えると2%である。12月から1月まで、1ヶ月強で2%。各知事が「ワクチンシャワーのようにワクチンを打っていく必要がある」(三重)「打って打って打ちまくり、接種の大加速をお願いしたい」(愛知)「とにかく打っていただきたい」(山梨)と県民を急かしまくっているにも関わらず。
記事の中では「高齢者の意思確認作業が追いつかない」などと言い訳が書かれているが、1回目と2回目は同じことをやってどんどん打っていたではないか。それが3回目ではできないということは、「もう3回目は打つ気がない」という人が相当数増えたということだ。
テレビ以外からちゃんと情報を取れる人は、オミクロンの症状や重症者数や致死率をしっかり見極めているのだろう。
現状、ワクチン未接種で「ワクチンパスポートが導入されたら不便になりそうで困る」「会社や親族からのワクチン打て圧力、未接種者差別に苦しんでいる」という人、結構いると思うが、もうしばらくの辛抱だと思う。
多くの人が、3回目を打たないから。
2回接種で3回目を打たない人はワクチンのことなど忘れて行くだろうから(1.ワクチンのことなど忘れる人 2.「なんであんなもの打たされたんだ?」と不信になる人 3.「2回打ったからには永遠に効果があるんだ」と信じようとする人 に分かれると思うが忘れる人が1番多いのではないだろうか)、そうすると遠からず、日本では物理的にもメンタル的にも「未接種の人が多数派」という状況になる。
物理的には、もうほとんどの人が2回接種から半年経っている現時点ですでに「ほぼみんな未接種」ということになるのではないか。
そうなればもうワクチンパスポートも崩壊(COCOAのごとく)、未接種者差別も消えるだろうから、平穏に暮らせる日々がやって来るであろう。
最後に、参考までに。
世界に先駈けて3回目どころか4回目の接種を進めているイスラエルでは、感染が収まるどころか桁が違うレベルの感染大爆発を見せている。
参考記事:オミクロン予防「4回接種でも不十分」 イスラエル研究
以上。
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