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今何時?

高校2年のある日。

この日は休日で、
部活から帰ってきてから夕方まで
自分の部屋で過ごしていた。

確か、
母は夜勤かなんかでいなく、
家にいたのは父と私。

日もほぼほぼ落ち、
薄暗い。

「はぁ〜お腹すいた。
そろそろご飯用意しないとな。」

ジャージャー
ジャージャー

階段を降りる間に聞こえる音。
どうやら父も起きたらしい。

そう部活から帰ってきて、
まだ顔を合わせてなく、
この時がこの日初めて話す瞬間。

トントントン

なんか準備してくれてる?

トントン

階段を降り切ったところで、
私の気配に気づき、

「おお、しょうこ、今日部活はあるんか?」

「部活?」

「ああ、行くんか?」

「?」

「部活。」

話し始めたところで、
どこか、なんだか違和感で、
どこか気味が悪い。

嫌な感じと、
まさかを込めて、ちょっと笑い混じりに
声を出した。

「今日はもう部活行ってきたよ!!」

「はっ、えっ?」

「もう行ってきたよ。」

「おお。。ん…」

「今もう夕方だよ!」

「えっ!」

陽が昇って、
陽が落ちる。
陽が落ちて、
陽が昇る。

僅かな時間だが、
その合間には同じような、
似たような薄暗さに包まれる。

父はきっと、
その隙に目を覚ましたのだろう。

陽が落ちていると起きた私と、
陽が昇っていると起きた父。

「今、夕方!!」

「えっ、夕方!夕方かぁ!
てっきり朝かと思っとったわ」

「あはははは」

年といえば年であったけど、
笑いにできるボケで良かったという
安堵の笑い。

ははは。

そんないつ年前の思い出を
思い出したのは昨日のこと。

この一週間、
起き上がりこぶしのおもりが、
ハマるようでハマらない。
自分の軸の僅かなぶれが時間の過ごし方を、
左右する。

この頃、
休憩の入りが押すことが続いていたが、
昨日は通常で、
ホッとした気持ちで、
休憩にたどり着いた。

少し静かな1時間で、
おもりのぶれも、
少しずつ前向きに取り戻す。

休憩を終えて、
間違いなく時間は見ていたけど、
ちょっとしてから、ふと、

「あれ?もうこんな時間?
あれ、休憩時間…1時間多く取ったかな?
いや、、それは流石にない。でももうこんな時間なんだ。」

一瞬の違和感は、
そう受け止めたことですぐに飛ばした。

「今日は時間が経つのが早いんだなぁ。
前向きでいるとあっという間なんだ。
そうなんだな。」

「お客様の引きも早めだし、
今日は少し早めに上がれるかな。」

そう思いながら、
閉店に向けての準備も重ねながら、
この日は定期的な注文もあったので、
その準備の時間を待っていた。

ちゃくちゃくと進む時間の中で、
後ろを振り向くことはなく、
手と足の動きもそのままに進んでいた。

ピロロロロ〜

電話が鳴る。

「はい、〜でございます」

と電話を取り、
店長へ受話器を渡す。

その間で、
そろそろ時間だなと用意し始めていたら、、

「あれ、まだ時間早いよ!」

「えっ!」

言われて、
今度こそ時計をちゃん見た。

あぁ、あぁ、
一瞬の違和感を打ち消したのは,
ある意味で過信だったか。

「びっくりしたぁ」

自分で自分にもびっくりした。

ついにボケたかと。
いや…これはこれでさすがに早すぎる。
これは休憩ボケの、
すっとボケ。

それで良かったけど、
ちょっとばかり心配な苦笑い。

はは。

時間の速さは変えられない
けども、
時間の感じ方はその時々。

良くても、
悪くても、
良かったと、
ははっと、
時を刻もう。

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