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夢見るそれいゆ 141

「國吉先輩、早く展示室入りましょう!」
私は動揺を誤魔化すように、そそくさと展覧室に入った。

「わぁ…!」
そこは、エントランスとは別世界だった。
デザイナーの手掛けた服だけでなく、世界観が室内全体に施されていた。
「…すごいね。」
先輩も感動している。色々あったけど、誘って良かった。

室内を見回したけど、更紗先輩はいなかった。
全部見終わってしまったのだろう。

私と國吉先輩は、ゆっくりと作品を見て回った。
洋服、衣装、ユニフォーム、デザイン画…。
ひとつひとつに新しい発見があるので、とても楽しい時間を過ごすことができた。
展覧室を出たときには、私も何か作りたくなってきてウズウズしていた。

「ひなたさんは、どうして服を作ろうと思ったの?」
國吉先輩が興味深そうに質問してきた。

私が手芸部に入って服を作ろうと思ったきっかけ、それは誰にも…夏越クンにすら言ったことがない夢だ。

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