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夢見るそれいゆ 98

「ふーん、あの男と何かあったわね。まあ、深くは聞かないわ。」
クレハは何か察したらしい。
こないだは夏越クンを名前で呼んでくれたのに、また「あの男」呼ばわりに戻ってしまってる。

「ごめん、クレハ。今日は國吉先輩がいるから此処に長居出来ないの。実は、八幡さまに願いごとがあって来たの。」
私は、本題を切り出した。
「願いごと?」
「ちなっちゃんが行方不明になってしまったの。無事に見つかるようにお願いしたいの。」
ちなっちゃんと絶交していることは、クレハも知っている。

「ひなたは、その友達に傷つけられたじゃない。ひなたは彼女を許せるの?」
クレハが苦々しい表情を浮かべた。

「そうだね。今だって…ちなっちゃんを思うと、心が痛いよ。でも、会えなくなってしまったら、怒ることも許すことも出来なくなっちゃう。それに──」
「ひなた?」
「私、ちなっちゃんに絶交された理由が分かったんだ。」

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