見出し画像

紫陽花の季節、君はいない 38

面接を終え、外に出た俺はスーツの上着を脱ぎネクタイを外した。
周りは国道と田んぼに囲まれていて、蒸し暑い。
しかし今までの面接の中で一番手応えがあったので、俺の心は軽かった。

面接地からちょっと離れた、小さな神社のバス停まで15分ほど歩いた。
辿り着いてすぐM駅行きのバスが来た。次にバスが来るのは1時間後なので、運が良かった。
辺りを見回しても避暑になるような建物は無かったから、乗り過ごしてたら確実に熱中症になっただろう。
県庁所在地とはいえ、街はずれなので俺以外に乗客はいない。市街地に入るまで貸切状態が続いた。

自宅の最寄りのバス停を過ぎ、M駅に着いた。
今日はあおいさんの誕生日。プレゼントを買うため、駅ビルの店を見て回った。

しかし、何を贈れば女の人が喜ぶのかさっぱり見当がつかない。
恋人の紫陽は精霊だったので、まったく参考にならない。
そこで発想を変えて、あおいさん自身に注目してみた。

読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。