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夢見るそれいゆ 32

翌朝、ママがしとしと雨の中、傘と制服を持ってきてくれた。
「おはよう、ひなちゃん。昨日夏越君から連絡もらった時はびっくりしたわ。あんなどしゃ降りの時は、パパの真似なんかしちゃダメよ!」
夏越クンは、ママに心配をかけまいと機転を利かせて、説明してくれたみたいだ。

夏越クンが、朝食にトーストと目玉焼きを焼いてくれた。
「夏越君、本当料理出来るようになったわよね。私なんて、こないだトースト黒焦げにしちゃったわ。」
ママは未だに料理が下手である。
ママはパパを送り出す為、家に帰っていった。

私達も朝食を食べた後、アパートを出た。
「ひなた、いってらっしゃい。」
「うん、行ってきます。」
夏越クンの職場は反対方向のバスなので、ここで別れた。

いつものバス停には、パパが並んでいた。
私は背伸びして、パパを私の傘の中に入れた。
「ぅはよー、ひな。」
「おはよう、パパ。昨日のおにぎり、酸っぱかったよ。」
「元気、出たろ?」
「うん、ありがと。」
パパには、何か学校であったのはバレバレである。
「まぁ、ひならしく頑張れよ。」

中学校の前に着いた。
ちなっちゃんに会うのが怖い。
でも、ここで逃げたらダメだ。
たとえ待ち受けているのが拒絶だとしても。
私は意を決して校門をくぐった。

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