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紫陽花の季節、君はいない 64

俺は静かになった部屋で、コーヒーを飲み一息ついた。
「柊司はしっかりしているようで、変なところで頑固なんだよな…。」
今は柊司の職場と俺の通学先が同じバスである。
しかし、俺の就職先のバスは反対方向なのだ。
柊司の真似をして、子どもまで傘を差さない子になったら困る。


「──それにしても、俺は『江戸初期の藩主』に本当に縁があるな。」
思わずフッと笑ってしまった。

江戸初期の藩主は、八幡宮ではない神社の精霊「梅さと」と恋仲だった。
二人は結ばれることはなかったが、藩主はこの地域の神社の由緒書きに必ず登場する位の名君になった。
(彼は宗教を整理していたこともあり、八幡宮などは不遇な時代だったらしい。)

俺も精霊に恋をしたことで親近感を抱いていたけど、まさか就職先で彼の名前を見ることになるとは思ってもいなかった。

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