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夢見るそれいゆ 92

放課後、県警の人に中高合同で使われている図書室に呼び出された。
県警の人は50代ぐらいのオジサンである。
そこには、國吉先輩もいた。

「──君と行方不明の子が、この男を巡って言い争っているって証言があったのだが、それは本当のことかい?」
この間ちなっちゃんと揉めてたところを見ていた人がいたらしい。

「本当です。」
私は小さい声で答えた。

「君は彼女の行方に何か心当たりがないか?」
県警の人が、じっと睨んだ。
「いえ、特には。」
私は疑われているのだろうか?

「そっちの君、心当たりは?」
國吉先輩の方にも問い質した。
「僕も心当たりはないです。」
先輩はキッパリ言いきった。

県警の人は、ため息をついた。
「まだ中学生なのに男を取り合って揉めるなんてなあ。」
事実は違うのに、この人はハナから決めつけている。

すると國吉先輩が、
「それは違います!僕がこの子に片想いしているんです。取り合っていたわけではないです。」
と大人相手に発言の訂正を求めた。

「そ、それはすまなかったな。」
國吉先輩の気迫に圧されたのか、県警の人は謝ってくれた。

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