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夢見るそれいゆ 90

それにしても、お酒の強いパパがここまで酔っ払っているのは珍しい。
パパのお酒の嗜みのモットーは、「お酒は楽しく、飲まれない」なのに。

「ひなー。実はな、今日夏越が『変』だったの俺のせいなんだ。」
「え?」
「昨日の夜さ、夏越に言っちまったんだよ。『ゆかりちゃん美人だしモテるだろうから、お前も大変だな』って。」
昨日まで機嫌の良かった夏越クンが、今日妙に自信を無くしていたのは、パパの言葉のせいだったのか。

「夏越さ、自分が不甲斐ないことでひなを傷つけたこと謝ってたぞ。『鈍感でゴメン』って──。」
そう言うと、パパは寝落ちしてしまった。

夏越クンは、どこまでパパに話したのだろう。
傷つけたのは、謝るべきなのは、私の方なのに…。

ママと一緒にパパをベッドまで運び、横たわらせた。
「きっと柊司くん、ひなちゃんの為に夏越くんの気持ちを聞き出すのに飲み過ぎてしまったのね。」
ママが眠っているパパの頭を愛おしげに撫でた。

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