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紫陽花の季節、君はいない 71

柊司はあおいさんが分娩室に入っていったのを見送ると、そわそわしだした。
「夏越、とうとう生まれるんだな。」
あおいさんが妊娠してから、柊司は子どもが生まれるのを楽しみにしていた。
生まれる前だというのに、親バカと言っても過言ではない。

「お前だったら、良い父親になれると思うよ。」
俺は素直にそう思ったのだが、柊司には含みのある言葉に聞こえたみたいだ。
「なぁ、夏越。お前は自分の父親の話ってしないよな。」

俺の父親は俺に興味がない。だから、俺も父親に思い入れがないのだ。
否、持たずにいようと心がけているんだ。

「…そうだな。話す程でもないし。」
うっかり蓋をしている感情に気づきそうになり、俺は父親の話題を強制終了させた。

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