紫陽花の季節、君はいない 33
「闇。さっき気を失っていた時に見たあれか。
何だか妙に居心地が良かった。」
俺はあの空間にずっと居ても良かったとすら思っていた。
すると、涼見姐さんと御葉様の表情がみるみるうちに青ざめていった。
「夏越!お前、闇に飲まれるとは『消滅』すると同義なのだぞ!!」
姐さんが俺の肩をガシッと掴んで俺を揺さぶった。そして、姐さんの目から涙が溢れていた。
「愚か…者。お前が消滅したら生まれ変わってくる紫陽はどうなる。私だって…お前が消滅なんて──。」
最後まで言わないうちに、姐さんは俺を突き放して、後ろを向いてしまった。
「夏越殿…涼見は言葉こそ厳しいですが、貴方をとても心配しているのですよ。勿論、私もです。
どうかそのことに気づいてください。」
御葉様も泣きそうなのを堪えているような顔をしている。
「二人とも、心配…かけてごめん。」
俺は心から二人に詫びた。
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