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紫陽花の季節、君はいない 2

あおいさんは、俺の友人・柊司の奥さんである。
以前は白い服が定番でボブカットだったけど、今は髪をヘアゴムでひとつに纏めている。

「あおいさん、髪伸びたね。」
「今はこの子がいるから、長時間のお出掛けは控えているの。ここまで髪を伸ばしたのは久しぶりだわ。」
あおいさんは、優しくお腹を撫でた。
この子が生まれる頃には、安心して出掛けられる兆しが見えるといい。

「きっとこの子は、夏越くんのこと大好きになると思うわ。」
「え…何で?」
俺は、ドキッとした。一瞬、「あの事」が頭をよぎった。
「だって、柊司くんの子どもだもの。うふふ。」
「ああ、なるほど…。」
あおいさんが「あの事」を知っているわけないではないか。

柊司は何故か俺のことが大好きだ。
アイツが俺と同じ大学に通っていた頃は、恋人疑惑があった程だ。
(その頃には、もう柊司はあおいさんと付き合っていた。)

あおいさんの家事を手伝うことになったのは柊司に頼まれたからなのだが、それは彼女の為だけでなく、俺のことを心配してのことだって分かってる。

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