hollyhock 14 【完】

──あれから4年、柊司くんは社会人になり、私達は結婚する事になった。

「ねえ、夏越くんに伝える時、きっかけになったカレーを食べながらにしない?」
私の提案に、
「いいねぇ、油断した夏越がびっくりするの見るの楽しみだ。」
と、柊司くんはニヤリとした。

「あおい、夏越だいぶ変わったよ。
何て言うか…ちゃんと人と関われるようになったよ。」
「きっと、良い出会いがあったのね。」
私が柊司くんと出会い、自分を好きになれたように。

「でも、誰と付き合っているか言ってくれないんだよな~。まさか…人妻?」
「知りたいの?」
「言いたくないなら無理に聞こうとは思わないけどさ、何も相談してくれないのも寂しいだろう?」

私は、思いやりがあるのに人の心に土足で踏み込まない柊司くんが好きだ。

「今日、あおいのお母さんに挨拶に行くスーツ、これで大丈夫か?」
柊司くんの職場はスーツではないので、こないだ私と一緒に買いに行った。
「柊司くん、しつけ糸付いたままよ。」
「わっ!本当だ!」

しっかりしてるけど意外に抜けている所、傘を差すのが苦手な所、そんな所も好きよ。

「──ねぇ、柊司くん。結婚するの、私で本当に良いの?後悔しない?」
実は、今でも柊司くんに愛想尽かされないか怖いのだ。

「あおい、俺は『あおい』じゃなきゃ嫌だ。
不安だったら、何度でも言う。結婚したいのは、あおいだけだ。結婚して下さい。」
「はい。」
私は、柊司くんをぎゅっと抱き締めた。

──私の名前「あおい」は英語で「hollyhock」。
柊司くんの「柊」は「holly」。
出会う前から、貴方はずっと一緒にいたのね。
これからも、ずっと一緒にいようね。


【完】

読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。