夢見るそれいゆ 96
國吉先輩が私に買ってくれたのは、チョコモナカのアイスだった。
先輩はソーダ味の棒アイスの袋をコンビニ内のゴミ箱に捨てた。
「確かに、小さい頃歩き食べとかしたら親に怒られたよ。」
外に出たら、燃えるような夕空だった。
交差点の信号が赤だし、私は「いただきます。」と言ってアイスを頬張った。
「ひなたさんは、幸せそうに食べるね。」
國吉先輩が私のアイスを食べる姿を見て、微笑んでいる。流石に、ちょっと恥ずかしい。
「美味しいものを食べているからですよ。」
私は当たり前のことを言ったつもりだった。
「うちの場合、宮司の家ということもあって、食事マナーが厳しかったから…。」
先輩の瞳が少し寂しそうに見えた。
信号が青になった。
「さあ、渡ろうか。」
先輩は、この話題をさりげなく打ち切った。
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