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紫陽花の季節、君はいない 79

柊司に聞かれて、俺は彼女の名前を付けたときのことを思い返した。

『私、生まれたての紫陽花の精霊だから名前無いの。私の名前、アナタが付けて!』
そう彼女に頼まれて、俺は紫陽花の精霊だから「紫陽」って名付けたんだ。

彼女は精霊だったから自分の名前を書くことはなかったけど、「紫」も「陽」も画数が多いと後々気づいたんだよな。

この子には、どんな名前が良いだろう。
俺は赤ちゃんの顔をじっと見つめた。

柊司の言うとおり、向日葵が似合う娘だと思った。
俺はスマホで【向日葵】を検索した。

陽葵(ひまり)とか紫陽とお揃いだな。
…って、あおいさんの子なのに紫陽ともお揃いにしてどうする、俺。

それに、この子は彼女の生まれ変わりではない気がする。
彼女はやはり雨の紫陽花のイメージなのだ。

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