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紫陽花の季節、君はいない 30

「夏越…お前、3月に此処に来たときよりも酷い顔をしているぞ。何があった?」
姐さんは真っ直ぐに俺を見た。
誤魔化しなどは通じないだろう。
「姐さんには叶わないな。話すよ。」
俺は木にもたれ掛かっていた体を起こした。

「俺さ、夢で義理の母親に実の母親と紫陽が死んだのは俺のせいだって言われたんだ。」
俺の言葉に姐さんの眉が微妙に動いた。しかし何も言わないので、俺は話を続けることにした。

「今度は俺のせいで、友人の奥さんと生まれてくる子どもも死ぬかもしれないって言われた。
俺は疫病神なのかもしれない。
だったら友人家族から離れなくちゃって、此処から遠い場所で就活していたんだけど…全然駄目で。俺は社会に必要とされていないんだ。
俺がこんなんじゃ、生まれ変わってきた紫陽も支えられない。」
俺は悔しさと不甲斐なさで涙が溢れて、それは腿の上で握り締めた拳に落ちた。

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