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夢見るそれいゆ 179

何時もと変わらない様子の手芸部に私はほっとした。
でも、更紗先輩が見当たらない。

「木綿子(ゆうこ)先輩、更紗先輩は今日休みですか?」
「ひなたちゃん、更紗ちゃんは今お着替え中だよ。」
木綿子先輩は、部室の隅っこにある衝立を指差した。
そのスペースは、手芸部の更衣室の代わりになっている。
「ひなー、私いるよー。」
衝立から更紗先輩が手だけを出してひらひらさせた。

「更紗先輩が羊司先輩と作っていた服、もしかして出来上がったんですか?」
「うん。良い出来だよ。ひなたちゃん、良いタイミングで部活来たね。」
フフンと、木綿子先輩が自分のことのように得意気に笑った。

「夏休み前に仕上げたかったから良かったよ。」
「羊ちゃん、エジングお疲れさん!」
木綿子先輩が羊司先輩の肩をポンと叩いた。
大人っぽい羊司先輩を「羊ちゃん」呼ばわり出来るのは、幼なじみである木綿子先輩くらいである。

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