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紫陽花の季節、君はいない 47

あおいさんは「ありがとう」と言うと、俺の手からプレゼントを受け取った。
あおいさんは、ひどく眉間にしわを寄せている。

やはりダンナ以外の男からのプレゼントは、気持ち悪かったかもしれないと後悔したが、後の祭りである。

「あおい、開けてみたら?夏越、開けてみていいよな?」
「あぁ、いいよ。」
俺が柊司に返事すると、あおいさんは包装紙が破れないようにプレゼントを開けた。
俺はその様子を息を呑んで見ていた。

包装を解かれたバレッタが、あおいさんの手の中でキラキラ輝いている。
あおいさんはそれをじっと凝視した。

そんなに気分を害してしまったなら、あおいさんに謝らないといけない。そう思った時だった。

「──柊司くん、私…もうダメ!」
あおいさんはそう言うと、ボタボタ涙を落とした。
「そうかそうか。そんなに嬉しかったか!」
柊司があおいさんの肩を優しく抱き寄せた。

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