見出し画像

夢見るそれいゆ 26

「ご馳走さまでした。」
國吉先輩は紅茶白玉だんごを完食した。

「この衣装、ひなたさんが作ったんだって?
すごく良く出来てるね。」
國吉先輩が私の衣装の袖をそっと摘まんだ。
「ありがとうございます。」

その時、私は後ろから視線を感じた。振り返ると、ちなっちゃんが休憩から戻ってきていた。
いや、隠れていたのだ。

文化祭が終わってから、屋上に続く階段の踊り場で私はちなっちゃんを問い質した。
「ちなっちゃん、どうして隠れていたの?」
「私は、國吉先輩と釣り合わないから。ひなちゃんこそ、早く先輩とくっついちゃってよ。」
「私は、先輩のことは何とも思ってないよ。どうして、ちなっちゃんは私と先輩をくっつけようとするの?」

すると、ちなっちゃんが不気味な笑顔でこう言った。
「…だって二人が付き合えば、私と先輩に接点が出来るじゃない。」
私は唖然とした。こんなに怖い彼女は、見たことがない。
「二人が付き合えば、私達とWデート出来るわよ。」
こんなの、何だか間違っている。

「ねえ、ちなっちゃん。ちゃんと國吉先輩と向き合おうよ。そうじゃないと、今の彼氏にも失礼だよ?」
すると、ちなっちゃんは、
「うるさいなぁ、そんなの私の勝手でしょ?
あぁ、もういいよ。ひなちゃんとは友達辞める!!」
と吐き捨てるように言うと、教室に戻っていった。

遠雷が聞こえる。もうすぐ激しい雨を連れてくる──。

読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。