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紫陽花の季節、君はいない 63

8月半ば夕刻、ゲリラ豪雨が降った。
柊司は仕事帰り、スマホを雨で水没させてしまった。
柊司は雨の日でも傘を差さない主義である。

スマホを壊したことをあおいさんに言うのが気まずいのか、びしょ濡れのまま柊司は俺の部屋にやって来た。

「だ~か~ら~、何でお前は傘を差さないんだよ!!」
俺はシャワーを貸した後、柊司を質した。
「傘って手が塞がって嫌なんだよ。第一俺にはお前という傘がいるから普段は濡れないし。」
柊司は年甲斐もなくむくれている。

「俺は夏休みだからバス乗らないし、俺が就職したらバスの方向変わるんだから傘を持つ習慣つけろ。
せめてレインコートを着ろ。」
「レインコートは蒸し暑くて嫌なんだよ。」
俺がここまで注意するのは、柊司の子どもの出産予定日が近くなっているからだ。

「とりあえず、明日の朝スマホを修理に出してこい!!いいな!?」
そう言って、俺は柊司を部屋から追い出した。

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