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紫陽花の季節、君はいない 21

食事中、俺は薄々気になってたことを聞いてみた。
「なぁ、柊司。お前こんなに料理出来るのに、料理人になろうとは思わなかったのか?」
「あおい、夏越が俺に興味持ってくれた!」
柊司が目を輝かせた。
「良かったね。柊司くん、夏越くんのこと大好きだものね。」
俺って、そんなに他人に無関心に見えるのか。

「まあ、考えたことはあったな。
でも料理人だと家族を持った時に時間がすれ違うから、今の定時に帰れる職場にしたんだ。」
なるほど、料理人だと他人のオフの時間に奉仕する分、家族と団欒するのは難しいかもしれない。

「それに、あおいが俺の料理を『美味しい』って食べてくれるから充分幸せだし。」
「柊司くん…!」
見つめ合う二人の周りにハート乱舞の幻覚が見える。

「そういえば夏越、来年は就職するんだよな?」

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