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第1楽章 初夏【#シロクマ文芸部】

初夏を聴く。音楽の授業の課題だ。

先生が「1年を通して、クラス皆で『季節』を作曲し、3月の卒業式で発表しよう」と言い出したのだ。

「でも、何で第1楽章が『初夏』なの?普通『春』から始まるものではないの?」

「『春』は最終楽章に取っておきたいんだって」

私は納得いくような、いかないような気分になった。

初夏の音を感じる為に、私たちは校外に出た。

開放感に浮かれるクラスの子たちの明るい声。学校まわりの田んぼがあり、風が稲苗と水面を撫ぜていく。

学校に戻ると、思い思いに曲を作り、『初夏』を聴いた。

皆でディスカッションし、第1楽章は完成した。陽の光と風を感じる、明るい曲になった。

6月の課題は第2楽章『梅雨』である。先が思いやられ、皆が憂うつになった。


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