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紫陽花の季節、君はいない 20

シャワーを浴び終えた柊司は、あおいさんのお腹にそそくさと向かい耳を当てた。
大きな男が体を小さく丸くしているのが、少し滑稽にも見える。

「おお、今日も元気だな!」
柊司は今の段階でかなりデレデレなのだが、子どもが生まれてきたら一体どうなってしまうのだろう。

「柊司くん、そろそろご飯お願い…。」
あおいさんが言うと、柊司は我に返った。
「あ、すまん!夏越、手伝ってくれ。」

柊司は大きめの鍋にお湯を張り火をかけている間に、小松菜をザクザク切っている。
「夏越、お湯が沸騰したらパスタを入れてくれ。」
俺はパスタを熱湯に入れ、タイマーをかけた。

柊司がパスタが茹で上がる直前に小松菜を入れた。そして茹で上がったものを、ニンニクを炒めて白ワインであさりを蒸していたフライパンに投入した。

「夏越、皿を取ってくれ。」
俺が皿を差し出すと、柊司は手際よくあさりと小松菜のパスタを盛り付けた。

「あさりと小松菜は、カルシウムと鉄分が摂れるから、あおいだけでなく夏越にもぴったりだな。」
「柊司、一言多い。」
でもあながち間違いではないのが悔しい。

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