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夢見るそれいゆ 139

エントランスで待っていて20分、國吉先輩が息を切らして館内に入ってきた。

全速力で走ってきたからか、自動体温測定器に引っ掛かり、スタッフさんに止められていた。

さらに30分後、先輩はようやく館内に入ってくることが出来た。
待ち合わせの時間から1時間が経っていた。

「ひなたさん、遅れてごめん。」
國吉先輩は今にも泣きそうな顔で謝った。
「先輩、大事な用事があるなら先に言って下さいよ!」
私は自分が思っていたよりきつい言葉を先輩に浴びせてしまった。もっと優しく出迎えようと思っていたのに。
「…ごめん。どうしても、ひなたさんと出掛けたかったから。」
どうしよう。國吉先輩を泣かせたくて、展覧会に誘ったわけではないのに。

「──私だって、今日國吉先輩と展覧会観て回るの楽しみにしてたんですよ。」
「え…?」
更紗先輩に言った時にははっきり言えたのに、本人を前にしたら小声になってしまった。
でも、今の「え…?」は聞こえなかったわけではなかったらしい。
國吉先輩の顔が真っ赤になっていた。

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