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夢見るそれいゆ 30

──夢の中、私は八幡宮にいた。
しかし、雨でも夜でもないのに空が暗い。

大きな茅の輪の向こうに、夏越クンの後ろ姿を見つけた。
夏越クンは膝から崩れ落ち泣いている。

やがて、空に大きな光の輪が輝き出した。
すると、羽衣を纏った髪の長いワンピース姿の少女が光の輪から現れ、ゆっくりと降りてきた。

大地に降り立つと羽衣は姿を消し、少女は泣いている夏越クンの元に歩み寄った。

すると、夏越クンが私には見せたことのない笑顔で少女を抱き締めた。

私は、この少女が夏越クンの最愛の「紫陽」なのだと分かった。

彼女は生まれ変わり、夏越クンに会いに来たのだ。

私が顔を見ようとした所で、目が覚めた──。

目覚まし時計は21時を表示していた。

夏越クンは、私が使わせてもらっているベッドにもたれかかる形で眠っている。
目には涙が流れていた。

今日は6月21日。
紫陽花の精霊「紫陽」の命日である。

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