紫陽花の季節、君はいない 46
「柊司くーん、夏越くーん。私の名前が聞こえてきたけど、どうしたの~?」
あおいさんが玄関から入ってきた。柊司が俺の部屋に入ってきた時に、ドアチェーンをかけ忘れたらしい。
柊司が俺を肘で小突いて、
「ほら、今だ。」
とあおいさんにプレゼントを渡すように促した。
俺は観念して玄関に向かい、あおいさんに歩み寄った。
「おはよう、夏越くん。玄関開いてたから、入ってきちゃった。」
隣の部屋から自分の名前が聞こえてきたからか、あおいさんは戸惑いを隠すように微笑んでいる。
「おはよう。あ…あの、これ1日遅くなったけど、誕生日おめでとう!」
俺は小さな包みを両手で勢いよく差し出した。
「…え?」
あおいさんの反応に、俺は血の気が引いた。
もしかして、気持ち悪がられてしまったのだろうか。
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