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夢見るそれいゆ 10

夏越クンは、夕飯にレトルトのミートソースのパスタをサラダ付きで作ってくれた。
「柊司よりは料理は下手だけど、パスタ茹でる位は出来るようになったよ。」
かつて、夏越クンは料理音痴で、パパが独身の頃は夕飯を作ってもらってたらしい。

「昔は、生きる力が弱かった気がするよ。空腹で倒れて柊司に病院に担ぎ込まれたのは、今でも覚えているよ。」
笑いながら話す夏越クンだが、あの時は紫陽花の精霊の彼女に急に会えなくなり憔悴しきって、食べ物が喉を通らなくなっていたと昔に言っていた。

「ひなた、部活とか入るのか?」
夏越クンが話題を変えてきた。
「部活かぁ。明日、部活動見学あるけどどうしようかな。夏越クンは中学生の時は、何部だったの?」
「…パソコン部という名の帰宅部。」
そういえば、昔の夏越クンは人見知りだった。
ママが夏越クンと初対面の時、バリバリ警戒されてたって言ってた。

今では料理も簡単なモノなら作れるし、会話も普通に出来る。彼女との出逢いと別れが夏越クンを変容させたのだろう。

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