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夢見るそれいゆ 138

「それは誘った手前、先に観て回るのが悪いって思っているから?」
更紗先輩から聞かれて、私は自分の心に問い直した。

「──それも少しあるけど、私は國吉先輩と一緒に観て回るのを楽しみにしていたんですよ。」
昨日、ワンピースを縫い終えて最初に見せたいと思ったのは國吉先輩だった。

「ひな、それ國吉に会ったらアイツに言ってやって。
私は、先に展示室に行ってるから。」
更紗先輩は私の肩を軽くたたくと、一人で展示室に向かった。

私はエントランスに一人になった。

何人か、目の前を通り過ぎていった。
國吉先輩は中々来ない。

私はふと七夕の笹に目を遣った。
来館者の願い事が色とりどりに揺れている。

私は既に八幡宮で願掛けをしている。
だから、短冊には書かない。
どうか皆の願いが叶いますように。

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