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紫陽花の季節、君はいない 40

満月が昇ってきた頃、アパートに帰ってきた。
柊司達の部屋が暗い。まだ外出先から戻っていないようだ。
あおいさんのプレゼントを渡すのは明日にしよう。

俺は部屋のエアコンを着けた後、外出先でかいた汗をシャワーで流し、Tシャツ姿に着替えた。
スーツはクリーニングに出す為に、紙袋に畳んで入れた。

駅ビルの惣菜屋で買った唐揚げとおひたしを器に盛り付けた。
朝炊いていったご飯をレンジで温め直して、冷たいお茶で夕飯を済ませた。

ベランダに出ると、何処からか歓声が聞こえてきた。近所の家でオリンピックでもテレビ観戦しているのだろう。
外は月明かりで照らされている。俺は満月を隠すようにあじさいまもりをかざした。

「──誕生日か。」
紫陽が生まれ変わるために消えてしまってから、一年以上経つ。彼女はもう生まれ変わってきたのだろうか。
「会いたいよ、紫陽。」
俺はあじさいまもりを強く握り締めた。

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