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紫陽花の季節、君はいない 19

これ、本当に俺が触って大丈夫なのだろうか
?
俺はあおいさんのお腹に手を伸ばした。
しかし、あとちょっとのところで触るのを躊躇してしまう。

「夏越くん、大丈夫よ。怖くないわ。」
あおいさんに促され、俺はようやくお腹に触ることが出来た。
するとポコポコと元気よく動くのを感じた。

「あおいさん、動いた!」
「うん。私も感じたわ。」
触る前はあんなに怖かったのに、今は不思議と温かな気持ちになっている。

「実はね、柊司くんがはじめて触った時は動きが止まったのよ。だから、やっぱりこの子夏越くんにとても懐くと思う。」
あおいさんが優しくお腹を撫でた。

俺を産んで亡くなった実母も、俺がお腹にいた時はこんな風に優しかったのだろうか。

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