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紫陽花の季節、君はいない 77

「それは大事だけど…でも他人の俺がいる必要なくないか?」
娘の名前は夫婦で決めればいい。

「夏越…腹帯を神社まで受け取りに行ったり、出産に立ち会ったお前が、今更何を言ってるんだ。」
柊司は深い溜め息をついた。

「ごめんなさい、夏越くん。
夏越くんも一緒に名前を決めてほしいって言ったのは、私なの。」
「あおいさんが?」
「私、この子には皆に呼んでもらえる名前をつけたいの。
私は両親にあまり呼んでもらえなかったから…」
あおいさんは淋しそうに微笑んだ。

「分かったよ、あおいさん。
皆でこの子の名前を決めよう。」
「そう来なくっちゃな!!」
柊司が頭上で急に大声をあげたので、赤ちゃんは驚いて目を覚ました。

「ふえぇぇ~!」
あおいさんは泣いている赤ちゃんを抱き上げ、「よしよし」とあやした。
彼女はすっかり母親の顔である。

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