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紫陽花の季節、君はいない 66

「藩の歴史に興味があるの?」
女性が聞いてきた。まさか「精霊が恋人」という共通点のことを話すわけにはいかない。
俺はもっと根本の部分を話すことにした。

「俺がこの地域に来た時に、街の中を知りたくて神社巡りをしていたんです。
そうしているうちに、同じ人物の名前が由緒書きに出てくることに気づいたんです。
それがこの藩主だったんです。
それが面白いなと思って、興味を持ったんです。」
そして神社を巡っているうちに、八幡宮で紫陽花の精霊である紫陽に出逢った。

「そうなの。名前が残るほどいろんなことに貢献したのよ。ある神社では御祭神にもなられているし。
ここの土地も元々藩の御料牧場だったの。」
「そうなんですね。それは知りませんでした。
俺…実は今日ここに面接に来たんです。とても縁を感じるので、ここで働きたいです。
そろそろ面接なので失礼します。」
俺がそう言うと、女性は「頑張ってね。」と笑顔で見送ってくれた。

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