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紫陽花の季節、君はいない 65

こないだの面接の日。
俺は面接まで時間があったので、敷地内をブラブラ散策していた。

温室、広場、バラ園、池。
小さいけれど、レストランもある。
夏だから暑いけれど、居心地が良さそうな職場である。

そろそろ面接に向かおうとした時、俺は見覚えのある名前を見つけた。
「え?何で江戸初期の藩主の名前がこんなところに?」
俺が驚いていると、背後から声を掛けられた。
「こんにちは。ここのコーナーは藩主が民に推奨していた薬草が植えられているんですよ。」
振り返ると、物腰の柔らかい50代ぐらいの女性が立っていた。

「こ、こんにちは。」
俺は不意に話し掛けられてドキドキしたが、誕生日に柊司とあおいさんにもらったネクタイの結び目を触っているうちに落ち着いてきた。

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