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紫陽花の季節、君はいない 6

──彼女「紫陽(しよう)」は、銀色の長い髪が美しい、八幡宮の紫陽花の精霊だった。
俺が大学進学の為に実家を出て、この街に住み始めた年の6月に出会った。

母親の愛も知らず、女性が苦手な俺だったけれど、彼女の純粋さに惹かれていった。
彼女も俺の想いを受け入れてくれた。

しかし、この恋は禁忌だった。人間と精霊、存在が違うのだ。
紫陽は花の咲く時季以外は眠りに就いてしまう。
それだけではない。精霊は境内を出ると、消滅してしまうのだ。
紫陽と俺は6月の八幡宮の中でしか逢えなかった。
それでも、俺は紫陽と居られて幸せだったのに。

去年の6月、俺は彼女の様子が奇怪しいことに気付いた。
俺が紫陽との未来を語ると、複雑そうに微笑むのだった。

そしてあの夏至日食の日、俺は彼女を失ってしまったのだ──

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