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夢見るそれいゆ 8

私は八幡宮の境内をぐるりと歩いてみた。
本殿の他に色んなお社があったり、銀杏の大木や杉林、紅葉、ケヤキ、そして紫陽花の森があった。

花の咲いていない紫陽花の森に一人、赤い髪のゴスロリ服の女の子が佇んでいた。
その人は、私と目が合った途端に
「紫陽?紫陽なの?」
と私とは違う人の名前を呼んだ。
「いいえ、違います。その人は私に似ているんですか?」
彼女は肩を落とした。
「ゴメン…人違いだったわ。でも…少しだけ雰囲気が似ていたの。きっとあの子、今は貴女くらいの年齢だから。」
私より少し年上くらいの女の子なのに、まるで生き別れの子供を探す親のような言い回しである。

彼女を放って置けない、そんな気がする。

「あの…私で良ければ、友達になりませんか?」
私はそう申し出ていた。
彼女は戸惑いつつも、コクンと頷いた。
「私の名前はひなた。貴女の名前は?」
「…クレハ。」

八幡宮で新しい友達が出来た。

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