紫陽花の季節、君はいない 18
玄関のチャイムが鳴った。
「ただいま~。」
柊司がエコバッグを手に提げて帰ってきた。
「よう、夏越。夕飯作る前にシャワーひと浴びしてくるから、食材出しておいてくれないか?」
柊司は俺にエコバッグを手渡すと、足早に風呂場に向かった。
「柊司くん、お腹の赤ちゃんの音を聞きたくてしょうがないのよ。」
あおいさんがクスクス笑った。
柊司もだんだん父親らしくなってきた。
「…夏越くん、お腹触ってみる?」
「え?」
あおいさんが自分の大きなお腹を指差した。
さすがに他所の男が、人妻の体に触るのは憚れる。
「この子も夏越くんに触ってほしいって言ってるわ。ね~!」
無邪気に子どもに同意を求めるあおいさん。
「柊司くーん、夏越くんにお腹触ってもらっても良いわよね~。」
とうとう風呂場の夫にまで同意を求めた。
「おう、好きなだけ触れ~!」
夫の許可まで下りてしまったので、俺はあおいさんのお腹を触ることになってしまった。
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