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夢見るそれいゆ 34

人が来たので、私は体育館を後にした。

友達だった1年とちょっとが、こんなに簡単に壊れるなんて思わなかった。
そもそも友情なんて、彼女は私に抱いてなかったのかもしれない。

どろどろした感情が、私を支配していく。

大好キッテ思ッテイタノハ、私ダケダッタノ?
嫌ワレタ原因ヲ作ッタ國吉先輩スラ、今ハ憎イ。
嫌だ、こんな私。
コンナキモチ味ワウクライナラ、恋ナンテ知ラナクテイイ。
昨日、あんなに夏越クンや両親が励ましてくれたのに。
コンナ私、消エテシマエ──


──気付くと、私は闇の中にいた。
さっきまで、私学校にいたはずなのに。
消滅ヲ願ッタノハ、私デショウ?
そうか、ここは「無」なのか。
もう、何も考えたくない。
闇ニ溶ケテシマオウ。
私は目を閉じた。実体が消えていく。
コレデイイ。

「ひなた、駄目よ!戻ってきてー!!」
シャンと鈴の音が聞こえたかと思うと、闇が晴れていった。
そこは、八幡宮の紫陽花の森だった。

目の前には、クレハと知らない黄金色の髪の巫女さんがいた。
クレハがぎゅっと抱き締めた。
「良かったぁ、間に合って。」
クレハが、ポロポロ涙を流した。
精霊の冷たい体から、何故か温もりのようなものを感じた。

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