見出し画像

夢見るそれいゆ 3

夏越クンが旅行で留守の間、私は旅行雑誌を眺めていた。
ドッグイヤーが折られているので、大体の行き先が分かるのだ。

はじめの頃は、無邪気にお土産を楽しみにしていた。
「ひなたちゃん、お土産だよ。」
と夏越クンが私に手渡す時、微笑んで私の頭をポンポンする癖があるのだが、それは夏越クンがへこんでいるという事だって、ある時気づいてしまった。

夏越クンの旅に出る理由は彼女の生まれ変わりを探しに行っているからで、へこんでいるのは彼女を見つける事が出来なかったからだ。

私が成長するにつれて、夏越クンは紫陽花の精霊のお話をしなくなっていった。
私も、少しずつ夢のようなお話を忘れていった。

──そして、私は中学1年生になった。
「夏越クン、セーラー服似合う?」
私は、相変わらず合鍵で夏越クンの部屋にしょっちゅう行き来している。
「似合ってるよ。ひなたも大きくなったなあ。俺も年取る訳だ。」
しみじみ私を眺めて、頭をポンポンした。

読んで下さり、ありがとうございます。いただいたサポートは、絵を描く画材に使わせていただきます。