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紫陽花の季節、君はいない 70

電話は50代ぐらいの声の印象の男性が出た。
名前を名乗り状況を説明すると、すぐに柊司に替わってくれた。

「夏越、俺だ。」
「あおいさん、子どもが産まれそうなんだ!
いろいろ言いたいことはあるけど、さっさと病院に来い!!」
説教は子どもが無事に産まれてからでも出来る。
今大事なのは、柊司が来てあおいさんの不安を少しでも払拭することだ。

「分かった。早退してすぐにそっちに向かう。」
そう言って、柊司は電話をガチャンと切った。

「…あおいさん、柊司すぐに来るから。」
「あり…がとう、夏越くん。」
痛みの波が落ち着いているのか、あおいさんは微笑んでくれた。

あおいさんが分娩室に入るギリギリのタイミングで、柊司が到着した。
「柊…司くん、私頑張って…くるわ。」
あおいさんが柊司の手を求めた。
「ああ、頑張れ。」
柊司はあおいさんの手をしっかりと握り締めた。

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