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紫陽花の季節、君はいない 73

俺はあおいさんの子どもが生まれたのを見届けて、アパートに帰った。
(どさくさで病院にいたが、本来は他人が病院にいるのは禁止である。)

病院のコンビニで買ったおにぎりとお茶を自分の部屋で食べていて、柊司の家の片付けが中途半端になっていることを思い出した。

あおいさんから預かっていた鍵で部屋を開けた。そこは昨日のまま時間が止まったかのようだった。
しかし、昨日までと今日からは大きく違う。
小さな家族が1人増えたのだから。

「…よし、皆が帰ってきて快適に過ごせるように頑張るか!」
俺は、昨日の飲まなかったお茶が入ったコップを洗ったり、柊司から預かってきた作業着の洗濯をした。

終いにはベランダの窓拭きまでしていて、「俺、ちょっとやり過ぎじゃないか?」と我に返った。

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