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紫陽花の季節、君はいない 32

「社会が俺を必要としていないのではなく、拒絶しているのは俺の方?」
「そうだ。お前だってはじめから警戒されている人間と関わりたくないだろう?」
涼見姐さんは、ふうと溜め息をついた。

「──涼見、夏越殿に対して言葉が厳し過ぎますよ。」
聞き覚えのある、穏やかな女性の声。
「御葉様。」
黄金色の髪の巫女姿をしているが、彼女はこの八幡宮で一番位の高い精霊である。

「御葉様、こやつにはこの位厳しく言わないと心に響かないのです。」
と言う姐さんの言葉に、
「夏越殿、そうなのですか?」
と真剣な顔で俺に聞いてくる御葉様。
「そんなことはない…はずです。」
心に響き過ぎて、ズタズタである。

「夏越殿、貴方は邪気が増幅して心が弱っているみたいですね。
今日はちょうど紫陽がいなくなって1年ですから仕方ないですが。
夏越殿が闇に飲まれなくて、良かったです。」
御葉様の手には鈴が握られている。
さっきの鈴の音は、御葉様が鳴らしたのだ。

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