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紫陽花の季節、君はいない 68

面接は終始和やかな雰囲気であった。
取り繕うにも、薬草園で素を見せてしまったので気を使いようがなかった──

「まさかあの女性が園長だったなんてな。」
業界では結構な有名人で、TVにも時々出演しているらしい。
不勉強なのによく採用してくれたなと思う。

「紫陽、俺…春から植物公園で働くことに決まったよ。」
彼女が目の前にいたら、きっと「良かったね、ナゴシ!」って祝福してくれたに違いない。
俺はそう信じ、ぬるくなったコーヒーを一気に飲み干した。


朝には雨も上がり、今日も残暑が厳しい1日になりそうだ。
俺が起床した時には、柊司は既に出勤したようだった。

自分の朝食を済ませたあと、隣のあおいさんの様子を見に行った。
出産予定日がすぐなので、いつ生まれてもおかしくない。彼女をひとりにしておくのは心配なのだ。

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