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夢見るそれいゆ 25

休憩時間が終わるので、お皿を片付けていると、弓道着姿の國吉先輩が入ってきた。
「こんにちは。」
挨拶しただけなのに、教室の雰囲気がざわついた。
高等部に行っても、存在感は変わらない。むしろ、大人びた分オーラが増している。

「いらっしゃいませ。お席にご案内いたします。」
私は國吉先輩を空いている席に案内した。
「ひなたさん、久しぶり。」
「中等部卒業式以来ですかねー。ご注文は?」
「先程、ひなたさんがいただいてたものと同じものを。」
「紅茶白玉だんごですね。」
私はオーダーを受けると、調理担当の男子に伝えた。

そういえば、ちなっちゃんが休憩から戻ってきていない。
私は同じタイミングで休憩していた子に、ちなっちゃんを見なかったか聞いてみた。
「…み、見てないよ~。」
何だか煮え切らない返事が返ってきた。

紅茶白玉だんごを先輩に出すと、先輩は美味しそうに食べていた。
食べる所作すら、いちいち美しい。
「先輩はいつも所作が丁寧ですけど、疲れませんか?」
私は思わず、そんなことを口走っていた。
「ふふふ。そんなことを聞かれたのは、はじめてだよ。これが僕の通常だから、疲れはしないよ。」
先輩は、私の失言を笑って許してくれた。

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