夢見るそれいゆ 142
もしかしたら、幼稚だと笑われてしまうかもしれない。
でも、國吉先輩に嘘はつきたくない。
私は万が一笑われることを覚悟した。
「…國吉先輩、笑わないで聞いてくださいね?」
私の言葉に先輩は真顔でうなずいた。
「私が手芸部を選んだのは、先輩後輩の上下関係なく穏やかに活動出来そうだからという理由からでした。
それと、手芸部に入ったことで『夢』が生まれたんです。」
「…夢?」
「私の両親は2020年に籍を入れたんですが、『世の中の事情』で結婚式を挙げられなかったんです。
終息した頃にはもう私は生まれていたので、式は挙げず仕舞いになってしまったんです。
だから、私がウェディングドレスを作って、ささやかな結婚式を開いてあげたいって思ったんです。」
ひととおり話し終えたが、國吉先輩の反応がない。
どうしよう、引かれてしまったのだろうか。
「…あの、先輩?引いてしまいましたか?」
私が話し掛けると、先輩がはっとした。
「あ、ごめん。あまりにも素敵な話で感動してたんだ。」
よく見ると、先輩の目が潤んでいた。
「そうだね、是非叶えたいね!」
先輩が優しく微笑んだ。
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